本質感

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女子校の「善意の傘」はなぜ失敗したのか(本編)

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ある男女の話。
その女性は彼に対し過剰なまでにつくす。
朝は起こしてあげるし、着替えもさせてくれるし、歯を磨いてくれるし、髪もセットしてくれるし、朝食も食べさせてくれるし、靴も履かせてくれるし、駅までついていき、素敵な笑顔で見送ってくれる。
この男性はなんて幸せものなのでしょうね。

雨あがりに飛び立つ視点蝶

こんにちは、視点蝶です。

前回の序章の続きで、今回は本編。
女子校の「善意の傘」の活動をさらに考えてみるわ。
※前回の話の序章はこちら

www.honsitukan.com

そして今回は「循環」のお話。

概要

福井市の女子校で、突然の雨で濡れているおばあさんを見たのをキッカケに、ボランティアで傘の無料貸し出し活動を始める。
しかし1ヶ月後には9割が戻らず。傘を目立つ色にしたり、返却先のメモをつけたり、ポスターを作ったりで工夫したが、返却率はあがらず。
費用もかさみ、震災支援などほかの活動も忙しくなったため、今年10年を区切りに活動をやめることとなった。

というニュース記事。

善意の傘は「難しいレベル」

そもそも善意の傘は、難しいレベルの問題
一番ネックなのは「返却が面倒くさい」という点ね。

前回の話のように傘は人に嫌われているし、忘れっぽくなっているわ。
心理的な面が強くかかわる問題。
それに対し「返却しろ」と求めるのは、なかなか難しいわよね。

問題にはレベルがあって、なんでも頑張れば解決できるわけじゃない。
解決できない問題、解決が難しい問題もあるし。
基本的には、難しい問題はなるべく避けたほうがいいと思うの。
もっとレベルを落とし簡単に確実にできる活動にしたほうが。
でもそういうことを知った上で取り組むのも、素敵なのだけれども。

1人(1グループ)で戦うと負ける

問題に対し、1人で戦うと負ける
今回は学校という仲間がいて、1人ではないけど。
しかし問題の大きさによっては、1グループでは対応できない場合があるわね。

1グループというのは、時にはやっかいといえるわ。
かたよった意見でまとまったり、自分たちを客観視できなくなったり。
また多少まとまっているせいで、問題を解決するための力が足りないことに気づかなかったりするし。
簡単レベルなら1グループで対応できるけど、難しいレベルの問題に対しては、さらに多くの人の協力が必要だったりする。
1人で戦うと負けるけど、1グループで戦っても負けることがある。

こういう活動は「他を巻き込む」が大切ね。
他校の生徒や、市や町、商店街の人々などを巻き込む。
そうすれば、大きな問題を解決できる可能性はあがってくるわ。

また専門家に協力を求める。
すでに「善意の傘」をやっているところで成功しているところとかに。

他校の生徒を巻き込むのは、けっこう大事なことかも。
善意というのは、鼻につく。
他校からみると「偽善者ぶりやがって!」と思う人もいるし。
また「自分達はよいことは何もしてない。何もしていないから逆に悪者のようにされている。」と感じさせることもあるわ。困ったことに。
そのような気持ちがあると、さらに返却をとどこらせる心理的原因の1つになるのよね。

でも、もし彼らも同じ善意をする仲間になればどうかしら。
人は善意をおこなってる人間は鼻につくくせに、自分が善い行いをすることが好きだったりする。
人はもともと善いことをするのが好きなのよね。

目的を見失う

こういう活動は「目的を見失う」ことがある。
「雨の時に傘ないと困ってる人を助けたい」という目的が、まるで「返却率をあげる」ことが目的になってしまったり。手段が目的になることが。
目的を見失うと活動の方向性がおかしくなるし、効果が弱くなっていく。

また、目的が「抽象的」なんじゃないかという気もするわ。
始めに、おばあさんを気にかけたのがキッカケだけども、「雨の時に傘ないと困ってる人を助けたい」という漠然とした目的になってると思うの。
目的が抽象的になると、より難しくなるし、方向性があいまいになり、問題を解決しずらくなる。

例えば「年配の方や妊婦の方を、雨の日に傘がないときに手助けしたい」といった対象をしぼり、具体的な目的にすると、方向性が明確になり、解決に向かいやすくなると思うわ。

改善策を考えてみる

「年配の方や妊婦の方を、雨の日に傘がないときに手助けしたい」という目的に絞ってみるとどうかしら。
雨に濡れて風邪になったり、肺炎になったりしたら困る人に焦点を当てる。

生徒が雨の日に、「折りたたみ傘」と「安いビニール傘」の2つを持つ。
雨の日に普通に歩いていて、傘をもっていない年配の方、また妊婦をみつけたら、その場で「安いビニール傘」を貸す。
基本、返却は求めない(または駅と連携して返却できるよにするとか、同じ学校の生徒をみつけたら渡してとか)。

ビニール傘の費用はかさむ方法だけど、ただ不特定多数に貸すよりはよいと思うわ。
数百円で助かる命なら、安いかも。
費用ゼロにするなら、駅と連携して忘れ物の傘を使用するとかあるけど。
また最近は雨が強いので、安いビニール傘より「透明カッパ」のほうがよいのかしら。

別の視点で物事を考えることで解決できることも

さらに視点を変えて、「雨の時に傘ないと困ってる人を助けたい」という目的を、「困っている人がいる時に助け合うことができる町にしたい」という目的にしてみるとどうかしら。

前者は、善意を与えるだけ与えて、それでお終いになるわ。
善意を受け取った人はその後に何もすることはないし、広がりはない。
人は誰かに与えられたら、誰かに返したい。
自分がされたら、何かしたいと欲求がわくのが人よね。
誰かから受け取る、誰かに与えるの関係が成り立って、はじめて善意は広がっていくと思うわ。

男女の関係でもそうよね。
過剰なまでにつくすのが好きな女性がいるけど、つくされた男性はどんどんダメになっていき、そのうち別れる。
それって男性が、女性に「何も返すことができない状態」になっているから。
愛は「受け取る」と「与える」の関係が成り立ってないと、男女関係もダメになるのよね。

「困っている人がいる時に助け合うことができる町にしたい」にすると、傘という視点だけにかたよらず、「助け合う町にするためには」という視点で物事を考えるようになるわ。
そうするとその視点でいろんなアイデアが出てくるだろうし、自分達だけでなくどんどん他の人を巻き込んで力は増していき、目的が成功しやすくなると思うの。

先の改善策からいうと。
町全体で「妊婦や年配の人だけが傘を借りられる窓口」があればどうかしら。
そういう人を対象に傘を貸してくれる。また、その窓口ならどこに返してもいいとか。
駅や、公共施設、病院、協力してくれるお店とかにそういう窓口が。
※すでにありそうでなさそう?

妊婦や年配は傘を借りられますよマーク」があって、そのマークのあるところにいくと借りられるとか。
※その活動が全国で共通となるマークとなればいいのだけど

ある観光地で「善意の傘」が成り立っているところがあるけど、観光という町全体で「町をよくしたい」という視点で考えているから成功していると思うわ。

まとめ

とにかく善意は難しいのよね。
人のためにやったとしても、本当にその人のためになるとは限らないし。
ただの自己満足になる場合もあるし、善意から悪意が生まれることもあるわ。
善意のあつかいは難しいけれど、「人に何かをしたい」という気持ちは大事よね。

若い人は何もしらないのが欠点だけど、それが長所にもなる。
何もしらないから余計なことを考えず、挑戦することができる。
そういうことは大人にはできないので、世の中を変えるにはその若者の力が重要だったりする。
そしてその力に補完的に協力するのが、知っている大人ということね。
そういうお互いの関係で物事はうまくいくのかな。

活動をあきらめたのは残念だけど、その失敗体験がいつか役に立つ日がくるのかもしれないわ。
人生うまくいくことだけが、よいわけじゃないし。
ただ思うのは、そこで終わりじゃなく、この後もたまには考え続けることが大切なんでしょうね。