本質感

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甲子園の応援はなぜ「軽音楽部」ではないのか?(秀岳館吹奏楽部より)

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全てをかけてつっこむ視点蝶

こんにちは、視点蝶です。

最近「秀岳館吹奏楽部(熊本)」に関するニュース記事をみたわ。
吹奏楽部が、吹奏楽コンテストに出るつもりだったのに、急に野球部が甲子園に出場することが決まる。
それがちょうどコンテストとの日程とかぶり、どちらかを選ばなければいけず、結局生徒たちは泣く泣く甲子園の応援を選んだという話。

で、記事が美談で書かれていておかしいとか、先生に無理やり甲子園にいかせられたのではないかとか、野球部だけが優遇されているのはおかしいのではないかとか、そんな感じで炎上しているもよう。

わたしはこの記事をみて思ったわ。
軽音楽部が甲子園の応援すればよかったんじゃないの?」と。

そんなわけで、今回は「勇気」のお話。

なぜ「軽音楽部」が甲子園で応援しないのか?

よく考えたら甲子園で「軽音楽部」が応援しているところを見たことがないわね。
そんな学校はなさそう。
もしかして、そういうルールでもあるのかしら?

なんか吹奏楽部より、盛り上がるような気もするのだけど。
すごいノリノリで、応援できそう。
演奏者も、熱い夏にやられ、すごいハッスルしそう。

だいたい同じ音楽なんだし。
吹奏楽部は「クラシック」で、軽音楽部は「ロック」な感じだけど、まあ同じ音楽だからいいんじゃないのと思うのだけど。素人考えなのかな。

そもそも普段、若者はクラシックとか聞かないクセに、応援の時だけクラシックで応援するというのはどうなのだろう?なんかおかしくないかな?
たぶん聞き慣れている「ロック」のほうが、応援に力が入ると思うのだけど。

また軽音楽部といっても「ロック」だけじゃなく、「パンク」とかもあるわね。
「パンク」の応援なんて面白そう。想像もできない。
もし軽音楽部が応援となると、学校ごとに特徴がでると思うわ。

わたしは甲子園はあまりみないけど、そういう甲子園ならみるかもしれないわね。

日本人は感動を作れない

ルールで規制されているのか、伝統にのっとっているだけなのか、誰もやらないだけなのか知らないけど、そういう新しいことを日本人はできないわよね
地味に同じことをやり続けるし、新しいことに挑戦しない。

「軽音楽部で応援したいんです!」といっても、すぐ反対されるだろうな。
先生やら、PTAやら、野球部の顧問やら、野球部のOBやらに。
日本は、そういうのはつまらなく感じるわね。

アメリカだったら違うだろうな。
そういうの好きだし。特に「感動ストーリー」が生まれそうなら、どんどんやろうとするだろうし。ついでに映画化もするし。
たまにそういうドキュメンタリーとかみるけど、あのアメリカ人の生暖かい目でみてる顔が素敵よね。

今回の件でいえばこんな「感動ストーリー」かな。

吹奏楽部のみんなは、吹奏楽コンテストと甲子園の日程がかぶることがわかる。
学校側は、甲子園に行かせる方向へと進む。
しかし吹奏楽3年のみんなは、コンテストに出たい思いが強い。
そんな中でも3年のA子さんは、前回はミスして失敗したことを悔やみ、今まで頑張ってきた。今回のコンテストはすごく出たかった。

そこへ親友の「軽音楽部」のB子さんが、その思いを知り立ち上がる。
「私たち軽音楽部が野球の応援するから、A子はコンテストに出なさいよ!」
「えっ、でもそんなの無理よ…そんな前例、今までないし。それに応援する曲を覚える時間だってないでしょ。無視よ…」
B子は昔荒れていた時に、A子のおかげで音楽が好きになり、今がすごく幸せなことを話す。
まかせて!今度は私があなたを助ける番よ!

B子はまず、軽音楽部の仲間を説得する。
仲間は始めは否定的だったが、B子の熱い説得にうなずく。

そして次に先生の説得にあたる。猛反対。特に野球部顧問が反対がすごい。
野球部の応援は、吹奏楽に決まってるやろ!ふざけんな!
しかしB子はあきらめない。何度も先生とかけあうがダメ。
B子は諦めかける。

そこで、そういうことが起きていることを学校の生徒がしる。
B子の友達たちや、B子を好きな幼なじみで野球部でもある生徒会長のCくんが立ち上がり、学校のみんなで先生の説得にあたる。
さらにB子がひょんなことから知り合った「野球部OB」が最後に現れ、なんとか先生を説得できる。

しかし、甲子園まで時間がない。
曲を覚えないといけないし、チアリーダーや応援団との合わせる練習もある。
B子のパートはギター。曲を練習するが、勝手が違うのでなかなかうまくいかない。
B子は必死になって練習する。寝る間もおしんで練習する。
A子も協力する。幼なじみのCくんも差し入れにあらわれる。
Cくんが帰り際にいう。「もし、甲子園で優勝したら…いや、なんでない
そんなこんなで時間はどんどんなくなる。
B子の手は皮がむけ血がでてるし、疲労によりボロボロだ。
そして出発前日の夜に、なんとか形になる。
A子とB子は夏の星空を見上げて、お互いの勝利を誓い合った。

そして甲子園の当日。
B子たち軽音楽部は演奏する。
相手チームがざわめき、動揺する。「なんだアレは?えっ、軽音楽部?
B子たちの考えた新しい応援によって、選手たちも、観客も聞き惚れる。
B子たちの応援は、チアリーダーや応援団を活気づけ、また選手たちを活気づける。
選手の調子もよく、先制点をあげ7回までに3-0で進める。

しかし途中から、B子の様子がおかしくなってくる。
連日徹夜での練習のせいか、急に立ちくらみがするし、力も入らなくなってくる。
こちらの守備のミスをキッカケに、向こうの攻撃が活気づく。
そして1アウト満塁。そして次は4番。
カキーン。その時、B子は倒れる。バタン。

B子が目を覚ますと、メンバーが心配そうに見ている。
ハッとなり、ボードをみると9回裏になっていた。
点数は3-4で負けている。
B子は泣き出した。
A子にまかせておいて!と約束したのに、自分の不甲斐なさに悲しくなった。
「何をしてるのよ、わたしは…」

そこへメンバーの1人が優しくいう。
「ほら見て、B子」B子は、まわりを見渡す。
まわりをみると、応援団やチアリーダー、観客が必死に応援している。
「みんな言ってたわ。B子の頑張りはすごいって。B子がいたからすごい応援ができた。後は俺たちの番だな、まかせておきなよ。っていってたわ」
「それに試合はまだ終わっていないでしょ」
B子は思う。そうだ、まだ試合は終わっていない。
私はまだやれる。それに、メンバーもみんなもいる。
B子は立ち上がり、メンバーに声をかける。
いくわよみんな!本当のライブはこれからなんだから!
そして軽音楽部の演奏が始まる。
応援していたみんなが活気づく。みんながさらに一体となる。
A子のために、野球部のために、みんなのために、そして自分のために。
今までやってきた全てをB子はぶつける。

ツーアウト、ランナーは1塁2塁。
バッターは、B子を好きな幼なじみで生徒会長で野球部の彼。
彼はバッターボックスに入り、B子を思っていた。
オマエは本当にすごいよ。ここでダサいところを見せたら、一生オマエに嫌われるかもな。
そして彼はバットを構える。彼女の演奏を耳にしながら。

ピッチャーが投げる。
彼は思いっきりバットを振る。

みんながいっせいに空を見上げた甲子園の空は、青く澄みわたっていた。

まとめ

とまあ、こんな感動ストーリーになれば一番いいのだけど。
えっ、無理?いえいえ、わからないわよ。できないこともないかもよ。アメリカ人を見習ってやろうよ。

とにかく言いたかったことは、「吹奏楽コンテスト」か?「甲子園」か?の二者選択でなく、「第三の選択肢」を考えればよかったんじゃないのかしらという話。
既成概念を超えて、ゼロベースで第三の選択をね。
そして、そこに踏み出す勇気が大事なんじゃないかって。
そういうことって、人生いろんな場面でありますからね。

今回の場合だと他に「録音して電池式のラジカセで流す」という選択肢もあるわ。
1回戦用、2回戦用、決勝用とか、勝ってる時用、ピンチの時用とかいろいろなバージョンを作ったりして。まあ、プライドが邪魔して無理ですかね。
でも、こういうのって感動物語としてニュースで取り上げられたりしそうですけどね。

そういえば関係ないけど、最近やっている『青空エール』という青春映画があるけど、ちょうど「野球部」の少年と「吹奏楽部」の少女の話みたい。
CMでチラッと見ただけで、映画は見てないけど。

もしかしたら「軽音楽部」が出てきて応援するのでは?デジャヴ?

エピローグ

桜の舞う、春の新学期。
朝、先生が廊下を歩いていると、職員室前の壁を見上げているギターを持った女子生徒がいる。
生徒は、先生に気づき「先生、おはようございます」と挨拶をする。
先生は生徒が見ていた写真に気づく。

「コレってすごいですよね。この学校が初めて甲子園で軽音楽部が応援したのをキッカケに、次第に全国に広まって、今じゃあ軽音楽部が応援するのって当たり前になったんですよね。最近だとパンクの応援なんてありますし。」そういって生徒は笑う。

「でも、この女子生徒ほんとにスゴイですね。たった一人で初めて。いろんな反対とかあったと思うのに、一人で乗り越えていったなんてスゴイです」
「いや、別に一人でやったわけじゃないよ。それにコイツはそんなたいしたヤツでもないよ」
「えっ!先生、彼女のこと知っているんですか?」
「まあ、知らないわけじゃないけど…」
「実は、彼女に憧れてこの学校に入ったんです!昔のビデオをたまたま見て、すっごい感動しちゃって!私もこんなふうに人のために応援できたらなって」そういって彼女は嬉しそうにギターを先生に見せる。

「じゃあ、軽音楽部に入るんだ?」
「ハイ!」
「私が軽音楽部の顧問よ。今後ともよろしくね」
「えっ、そうなんですか!よろしくお願いいたします!」

その時に、ホームルームの予鈴が鳴る。
「そろそろ教室に行きなさい。入部届けはいつでもいいわよ」
「いえいえ、そんな待ってられません。次の休み時間に速攻で持って来ますから!じゃあ、先生またね!」そういって生徒は、まだ持ち慣れていないギターを持って、走っていく。
「オイオイ、廊下は走るなよー」
生徒はまったく聞こえていなく、走ったまま次第にみえなくなる。
「やれやれ、今年もヤンチャな子が入ってきたな」そう言って、先生はため息をつく。
でも、そのため息もどこか嬉しそうだ。

先生は壁にかかった写真を見上げる。
軽音楽部と応援団とチアリーダー、そして野球部員が一緒に写っている写真だ。
甲子園の一回戦は勝つことはできたが、次の試合であっさり負けた。
負けたけど、全然悔いはなかった。
写真の中に写っているみんなの表情は、晴れ晴れとしている。

しかし、その後が少し厄介だった。
ニュースで軽音楽部の応援が取り上げられ、インタビューがたくさん来たり、軽音楽部が応援なんて邪道だみたいな論争がおきたり、学校にクレームが来たりとか。まあ、感動のお便りとかも来たのだけど。
とにかく、あの時の学校の先生方には、大変な思いをさせたと思う。
そんなことを思えるようになった私は、大人になったのかな。
苦笑する。

ちなみにその年の吹奏楽部は、金賞をとることができた。
そしてその後の何年間は、軽音楽部が応援することはなく、吹奏楽部が応援をした。
一応、日程がかぶったことを考えて、軽音楽部には応援歌を練習する伝統は残したが、その機会を発揮することはなかった。
しかし、他の学校が軽音楽部で応援することが徐々に増えてきて、その流れにそい5年前から軽音楽部も応援するようになった。
ちなみにうちの学校の場合は、吹奏楽部と軽音楽部の合同応援だけど。

今思うと、よくあんな馬鹿やったなと思う。
ほんと馬鹿でしょうがない。
昔の自分にあきれる。

でも、ほんと楽しかった。

「先生、何ニヤニヤしてるんですか?」
いつの間にか教頭先生が近くにいたことに気づかなかった。
「あはは、何でもないですよ。若い新入生が入ってきたのか嬉しくて」
適当にごまかした。
「というか、もうホームルーム始まっているんじゃないですか?」
「ゲっ!しまった!教室にいかないと」
そう言って、慌てて先生は廊下を駆け出す。
「廊下は走らない!」教頭が叫ぶ。
先生はまったく聞こえていなく、走ったまま次第にみえなくなる。
「やれやれ」教頭はため息をつく。

廊下をかけながら、今年はどんな応援にしようかと考える。
他の学校になんて負けてられない。そうだ、今度はあの曲をやろう。あの曲は古くて誰もやってないけど、今は逆に新しいはずだ。いやいやそれとも…
そんな風に、走りながら考える。

先生の駆け抜けた後の巻き上げた風で、下に落ちていた桜の花びらが舞う。
花びらは、開いていた窓からヒラリヒラリと飛んでいき、あの日みた青空をかけぬけていった。